電力自由化って何?仕組みやメリット、デメリットを徹底解説!

電力自由化って何?

日本では2016年から電力小売の全面自由化が始まりました。

この制度によって、家庭や企業などの電力需要家は、自分たちが契約する電力会社を自由に選べるようになりました。

しかし、一方で、安定供給や値上げの問題なども指摘されています。

そこで今回は、電力自由化について、その仕組みやメリット、デメリットについて徹底解説していきます。

電力自由化とは?

電力自由化とは?

戦後復興から高度経済成長を、成長エンジンとして支え続けてきたのは「電力」であることは間違いありません。

戦後復興に関しては「水力発電」がメインです。

当時の金額で500億円以上を投じ、未踏の黒部川源流近くまで足を踏み入れた命がけの開発努力は映画「黒部の太陽」で有名です。

また、その後の高度経済成長の勢いは、「水力発電」だけでは事足りず、「原子力発電」と言う更なるリスクを負う覚悟が必要でした。

当時の決断は、失敗すれば一電力会社のみならず、時の政権をも吹き飛ばすくらいの大きなもの。

このような、一か八かのコスト度返しの決断ができたのも電力が地域独占制度であったからと言えます。

でんきる

1990年代に入り、電力業界に潮目の変化が訪れたんだ!

欧米発の規制緩和の流れが日本にも大きな影響を与えます。

リスクを負いながらでないと十分な電力供給ができない日本と、その気になればすぐに発電所建設が可能、広大な大地や長い海岸線を持ち発電に有利な欧米と比べ、どちらが高コストになるかは明らかです。

更なる経済成長のためには、産業構造全般の早急な見直しを求められることとなります。

その結果、1997年5月、下記方針が閣議決定されました。

電力自由化の流れが明確に

電気事業については2001年までに国際的に遜色にないコスト水準を目指し、我が国の電気事業のあり方全般について見直しを行う。

参照:経済構造の変革と創造のための行動計画

電力自由化はなぜ起きたのか?

電力自由化はなぜ起きたのか?

「日本の電気代は高すぎる。これでは世界との競争には勝てない。」

あらゆる業界の競争を減退させることになる、ということです。

経済活動の原理原則はこのように定義できます。

経済活動の原理原則

  • 売り手:消費者のニーズを研究し、最適なものをできるだけ廉価で提供しようと努力する
  • 買い手:最も自身に適合し、安価でサービスレベルの高いものを選択する

これが商取引の常識ですが、電力取引はどうでしょうか?

電力会社は、これまで電気事業法に守られた「総括原価方式」と言われる方法で経済産業省と2者で、電気料金を決定してきました。

さまざまな原価を積み上げ、それに一定の利益を乗せて料金申請するというものです。何をやっていても自動的に利益を確保できます。

生活や経済活動の根幹を担う電力会社の経営を安定させないと、経済界そのものがぐらつくという発想です。

何年も続いてきたこの制度は、電力自由化の妨げになるとして廃止されています。

一方、なぜか電力のことに関して顧客はほとんど無関心です。

  • 「日本では質の良い電気が自動的に供給されるだろう」
  • 「値段は必要なものは高くても仕方がない」
  • 「選択肢はないし、経済産業省がチェックするから問題ないだろう」
でんきる

他の商品ならもっとシビアになるんじゃないかな?

消費者利益+生産者利益=社会的利益を最大化すべき、というのが経済原則のはずです。

しかし、消費者は人任せで、良いか悪いかもよくわからない。

生産者はあらかじめ利益が確保されている。

それを是正しようのが電力自由化の動きです。

電力自由化 これまでの経緯

電力自由化これまでの経緯

電力自由化は1995年「発電事業の自由化」からスタートしました。

少し改良すると発電設備に生まれ変わる「高炉」を持つ鉄鋼メーカー、燃料の長期契約を行なっているガス会社などが参入しはじめました。

その後、5回に渡る電気事業制度改定により、徐々に電力自由化は進められていきます。

電気事業制度改定

  • 1999年│大規模工場や商業施設(電力シェア26%)
  • 2003年│契約500kW以上の需要家(電力シェア40%)
  • 2004年│契約50kW以上の需要家(電力シェア62%)
  • 2009年│市場活性化のための競争ルールの充実
  • 2016年│低圧需要家=小売全面自由化(電力シェア100%)

時系列の年表にすると以下の通りです。

でんきる作成

「電気事業法」上の制度改定を進めるのは当然ですが、さまざまな業界・会社・個人の参入障壁を撤廃することも同時に求められます。

長年独占権益を握ってきた大手電力会社は、参入障壁の撤廃を嫌がります。

50年以上、地域独占が良いとされていた訳ですからそう単純なものでもありません。

「安定供給・電圧・周波数」という電気の基本的な「品質」を担保しつつ、大胆に参入障壁を下げ、規制緩和を進めるという重大ミッションです。

でんきる

経産省の役人は大変な苦労をしたに違いないね...。

以下から、制度改定と同時進行された「規制緩和」についての解説をいたします。

既存電力事業者以外からの電力購入を可能に

まずスタートしたのが、発電事業の自由化です。これこそ既存大手電力会社の既存権益の権化のようなものです。

例え自由化してもあまりに専門的で膨大な資金投下が必要で、一体どういう会社が参入できるのか疑問でした。

  • 少し改良すれば火力発電所になる「高炉」を持つ鉄鋼会社
  • 天然ガス・石油の長期調達ノウハウのあるガス・石油会社
  • 資金力と圧倒的な営業力のある総合商社

次々と、独立系発電事業者(IPP)として参入していきました。

同時に電力調達に入札制度が導入され、役所・自治体や大企業などで、大手電力会社が不採用になったというニュースは、これまでの「電気事業法」に守られた権益がなくなったこと、経済産業省との蜜月が終焉を迎えたことを表していました。

電力卸売市場の設立

2003年、高圧需要家の自由化のタイミングで電力卸売市場(JPEX)が設立されました。

電力卸売市場(JPEX)とは?

電力卸売市場とは、電力を発電所が作り、電力会社が買い取って、小売業者や企業などに販売するための市場。

需要と供給のバランスで価格が決まり、競争原理が導入されているため、より良い電力料金が提供されるようになった。

図で示すと下記のようになります。("画像はしろくま電力様より引用"

画像引用:しろくま電力 https://energy.afterfit.co.jp/contents/pps_41

全面自由化を控え、発電事業者との相対取引しか電力調達の手段がなかったものを、そんなことができない小規模な小売事業者の参入を促すのが目的です。

当初、相場価格は10円/kWh前後で推移していたものの、2021年の想定外の冬季異常気象により250円/kWh程度にまで高騰

電力卸売市場(JPEX)頼りで事業を進めていた小売事業者が、次々と倒産・事業撤退に追い込まれたことは記憶に新しいところです。

原因は・・・

  • 2021年12月末の寒波で電力需要が急激に高まったこと
  • 世界規模で液化天然ガスの需要に供給が追いつかなかったこと
  • 国内での電力供給量が減少したこと
  • そのため、インバランスペナルティーが過負担になったこと

と言われています。

でんきる

インバランスペナルティー???

インバランスペナルティーの緩和

インバランスペナルティーとは?

電力卸売市場において、予定された電力の買い付け量や販売量と実際の電力の発電量や消費量が一致しない場合に課せられる罰則のこと。

電力小売事業に参入する会社は必ず、1日を48コマに分割した30分間の需給をバランスさせなくてはなりません。

バランスが崩れた場合、各送配電会社が調整しますが、その代わりバランスを崩した小売事業者はペナルティーを支払わなくてはならないとい

う制度です。

電力の他の商品との大きい違いに「同時同量」の原則があります。

「同時同量」の原則とは?

電力卸売市場において、電力の需要と供給が同時に同じ量だけ発生することを原則としたもの。

電力の需要が増加した場合は、その需要分だけ電力供給も増加することが必要であり、逆に需要が減少した場合は、供給も減少すること

が求められる。

これを守らないと「安定供給・電圧の安定・ 周波数の安定」という「電気の品質」の保持に大きな影響が出ます。

ただし、この作業は専門的であるため小売事業者にとっては大きな負担となり、参入を躊躇する主因でもありました。

当初、インバランスペナルティーは3%の誤差率で課されていましたが、2008年から緩和され、参入後2年間は10%が閾値となりました。

電力取引市場(JPEX)の改革

電力卸売市場(JPEX)でも、「同時同量」を担保するために「前日取引」を緩和し、「当日取引」を導入しました。

さらに、低圧まで広げた全面自由化の際には「1時間前取引」を設定しました。

託送料金の見直し

託送料金について経済産業省は以下のように説明しています。

託送料金について

電気を送る際に、小売電気事業者が利用する送配電網の利用料金として一般送配電事業者()が設定するもので、経済産業大臣の許可が

必要。新規参入する小売電気事業者だけでなく、大手電力会社の小売部門が送配電網を利用する際にも、各社が販売した電気の量に応じて

負担する。

一般送配電事業者とは、電力を送電網を通じて配電し、一般の電力使用者に供給する事業を行う企業や組織のことを指します。一般送配電事業者は、大規模な送電網を保有しており、発電所から送電網を通じて受電者までの電力の輸送を担っています。国内では北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力、北陸電力の10社が一般送配電事業者として、各地域で電力の送配電を行っています。

託送料金見直しの趣旨は、大手電力でも参入直後の新電力でも、同条件で送配電網を使用できるようにすることです。

でんきる

託送料金の見直しは自由化の大前提!

電力広域運営推進機構(OCCTO)の設立

東日本大震災の際、周波数の違いにより東西の電力融通に支障があるという話題が注目されました。

それを受けて、2015年に設立されたのが「電力広域運営推進機構」(OCCTO)です。

全面自由化をきっかけに、更に広域系統運用を拡大させるため、地域独占時代には難しかった全国的な広域運営が可能なように権限を強化しています。

電力広域運営推進機構

地域的な制約を超えた効率的な電力システムの運営を目指し、全国の送電網を広域に結びつけ、日本全国において電力の需要と供給を管

理・調整する組織。広域なシステム運営により地域の需要変動や自然災害などに対応しやすくなるなど、効率的な電力システムの実現に

一役買っている。

送配電部門の法的分離

最後が送配電部門の法的分離です。

送配電部門の法的分離

電力会社のうち、電力の送電および配電に関する事業を担当する部門を、別の法人格として分離させること。

従来、電力会社は送配電事業と発電事業を一体的に行っていたため、競争の促進や透明性の確保を目的として2000年の電力事業法改正に

より、送配電部門を別法人として法的に分離することが義務づけられました。

送配電部門の法的分離により送配電部門は独立した法人格となり、その経営状況や収支状況が明確になり、競争原理を反映した価格設定が可

能になりました。

でんきる

市場の競争環境が整備されたと言えるね!(実際は問題が山積みだけど・・・)

電力自由化がもたらすメリットとは?

電力自由化のメリット

電力自由化以前は、大手電力会社の単一プランを押し付けられていました。

自由化以降、多数の事業参入により、さまざまなメリットが創出されています。

電気料金が安くなる

自由化になると、多数の異業態の企業が新規参入します。

参入者が多くなると、自社が選ばれるべく、需要家のメリットを考えます。

簡単な方法は「値下げ」です。

でんきる

何よりこれが経産省の狙いだね!

さまざまな創意工夫されたプランから選ぶことができる

電気料金はコストだけでないと考える人もいます。

それに対応して、事業者は需要家のニーズに対応したプランを考えます。

例えば、以下に例示します。

ライフスタイルに合わせたプラン

  • 内容:平日9:00~17:00は電気代固定で10,000円、17:00~9:00は1円/kWhの従量課金。固定+従量のハイブリッドプラン
  • 例えばこんな方向け:家族4人で共稼ぎ、子供は2人とも学生、平日昼間は自宅に誰も居ない

携帯電話キャリアのプラン

  • 内容:別々の会社で契約すると携帯電話5,000円/月、電気10,000円。某携帯キャリアにセットで契約をまとめると12,000円
  • 例えばこんな方向け:携帯電話と電気を別々の会社で契約している

仮想通貨が貯まるプラン

  • 内容:毎月の電気代支払い額の◯%分をビットコインで還元
  • 例えばこんな方向け:仮想通貨に興味がある、仮想通貨を貯めている
でんきる

多彩なプランが提供されて、品数豊富になるね!

多様なビジネスモデルが生まれる

欧米やオーストラリア、ニュージーランドでは、1990年代から家庭などの「低圧部門」を含めた自由化がスタートしています。

そこでは多くの小売事業者がビジネスモデルの試行錯誤を重ね、シェア競争を繰り広げられた結果、多様なビジネスモデルが生まれてきたようです。

日経BPクリーンテック研究所が世界の主要電力小売事業者40社の販売戦略を調査、分析した「世界電力小売りビジネス総覧」によると、世界の小売り事業者のビジネスモデルは10種類に分類されるそうです。

ビジネスモデルサービスの特徴日本国内
ブランド・販売チャネル戦略年齢・職業・環境・志向など様々な顧客ニーズごとの商品ブランドを確立する全ての企業
webサービス・ビッグデータ分析スマートメーターや顧客情報の分析によるサービスの向上大手電力,ガス,生協
セット販売ガソリン、通信、ケーブルTV、ポイントなどのサービスと組み合わせて販売通信,放送,商社
地域産エネルギー供給地域由来のエネルギーを電気や熱の形で供給、販売。地産地消型ビジネスモデル地方自治体
再生可能エネルギー供給小売する電力の電源として、再生可能エネルギーを使用していることをアピールし、環境価値の提供を売りにする太陽光発電関連
料金メニュー戦略卸売市場、発電事業者との長期契約、自社電源の確保をアピールし、多様な料金メニューを提供するガス,高炉,石油
デマンドレスポンス戦略電力ピーク時に、ネガワット対応に応えてくれた需要家に、対価を支払う全ての新電力
蓄電池・マイクログリッド戦略蓄電システムとマイクログリッド構築は、kW・kWhモデルだけでなく△kWのビジネスとして注目電池,ハウジング
金融商品戦略顧客向け付加価値として金融商品の手法を適用、前払い顧客への割引など金融
コネクテッド・スマートホーム家庭内の家電機器をIOTでコネクトし、電力だけでなくセキュリティやホームオートメーションサービスを提供セキュリティ,家電
世界電力ビジネス総覧」を参考にしながら「でんきる」で作成
でんきる

国際標準でも日本の方向性は正しいようだね!

電力自由化 メリットまとめ

  • 電気代が安くなる
  • さまざまな創意工夫されたプランから選ぶことができる
  • 多様なビジネスモデルが生まれる

電力自由化がもたらすデメリットとは?

電力自由化のデメリット

世間では様々なデメリットが謳われていますが、要約すると以下の3点に集約されそうです。

電力安定供給への不安

電力自由化によって、競争原理に基づく市場が形成され、消費者は自分たちに最適な電力会社を選ぶことができます。

しかし、複数の電力会社が参入することで、電力供給の調整が複雑化し、安定的な電力供給への不安が生じる可能性があります。

たとえば、ある地域で需要が急激に増加した場合、電力会社が追加の電力を供給できるかどうかは、その地域に参入している複数の電力会社の供給力に依存します。

また、天候変化や災害などによって、発電所や送電線が被害を受けた場合、修復や代替の電力供給を調整することもより困難になる可能性があります。

そのため、電力会社や政府は、安定的な電力供給を維持するための仕組みを構築する必要があります。

でんきる

日本では電力会社への規制などで安定供給の維持に努めているよ!

新電力の経営の不安定化

電力自由化によって、多数の新しい電力会社が参入することができるようになりました。

しかし、新しい電力会社は、大規模な投資が必要であり、競争が激化することで経営不安定化が生じる可能性があります。

そのため、新規参入企業は慎重な経営戦略を立てる必要があり、電力会社や政府は新規参入企業を支援する政策を整備することで、電力市場の健全な発展を促進しています。

2021年の冬に異常な厳冬が日本を襲いました。

北海道電力以外で、年間ピークが冬に訪れるのは初めてで、予備力1%という危険な状況まで追い込まれました。

ピークは乗り切ったものの、電力不足と仕入れ料金の高騰により、多くの新電力が倒産や事業撤退を余儀なくされました。

でんきる

原子力の全停止は新電力にとっては大打撃だったんだね

電気料金値上げの可能性

経産省曰く、少なくとも2020年までは既存の電力会社は規制料金のメニューも提供することになっており、いたずらに電気料金が高くなることはないとのことですが、現実はどうでしょうか?

ロシア・ウクライナ戦争による地政学的リスク。

それによる天然ガスの国際的な値上がりにより、大手7電力が大幅な値上げ申請を目指しています。

あまりに申請幅が大きいため、政府の再申請要請ということになったようですが、これまで聞いたことのないような対応です。

でんきる

値上げ申請の続報は「でんきる」でも取り上げていくよ!

>>>電気代値上げ新記事作成予定(2023年5月下旬)

電力自由化 デメリットまとめ

  • 電力安定供給への不安
  • 新電力の経営の不安定化
  • 電気料金値上げの可能性

デメリットばかりで電力自由化は失敗?

これだけデメリットが顕在化すると、電力自由化そのものの成否が気になるのは当然のことです。

しかし、「失敗」と結論付けるのも違和感があります。

全面自由化直後、電気料金は「低位に安定」し、新規参入者には大きな市場として盛り上がりを見せました。

そこに東日本大震災が発生、原子力は全面停止し、今まで通りに安価に電力を供給できる土台が崩れました。

そこに加えて・・・

  • 冬場の大寒波に代表される「異常気象」
  • ロシアのウクライナ侵攻による「エネルギー危機」
  • それに伴う「国際的な天然ガスの奪い合い」
  • 「脱炭素圧力」

など、電力自由化当初には想像もしていなかった「想定外」が幾重にも重なっている状況です。

でんきる

これはしんどい状況だ、、、

電力自由化そのものは決して失敗ではなく、今起きていることを織り込んだ「制度設計」をどう再構築していくか?

ということに尽きます。

ここしばらくは国も、事業者にも、需要家にも厳しい状況が続くことが想定されます。

どう凌ぎながら自由化初期のような「電力料金の低位安定」状態に戻すか。

電力料金の工夫やプランの競争は、そこからの勝負になるのではないでしょうか。

電力自由化によってどの程度の節約ができるのか?

どの程度の節約ができるのか

とあるサイトを見ると、東京電力館内の電気料金見直しに関する記事が目に付きました。

電力会社とプランの選択により年間で下記のシミュレーションになるそうです。(従量電灯Bは切替前のプランです)

プラン契約アンペア数節約金額(年間)
従量電灯B50A(三人暮らし以上)17,300円
従量電灯B40A(二~三人暮らし)15,600円
従量電灯B30A(一人暮らし9,800円

ざっくり言うと、月額800円~1,400円の節約ということです。

この類のデータには必ず「試算結果はあくまで参考目安であり、実際の節約額や平均支払い額をお約束するものではありません」という注釈がつきます。(「でんきる」も同様です)

更には当たり前のことなので注釈は付きませんが「不可抗力は考慮できません」ということです。

確かに、現状(2023年5月時点)を考えると・・・

  • 政府の激変緩和措置で電気料金は、月額1,600~1,800円が減額される
  • 東京電力が申請した料金値上げのモデルケースでは月額2,600円程度の値上げ
  • 料金値上げを申請しているのは大手電力7社(関西電力、九州電力は申請無し)

などカオスな状況が続きます。

このような混乱と混沌の状況下、何百社という電力会社が設定する、何百プランを比較検討しますか?

でんきる

「電力会社を決める基準は何か?」を考えてみよう。

新電力の選び方のポイントと申込み方法

新電力の選び方と申込み方

今、考えておくべきポイント

混乱・混沌の中で一喜一憂するより、もう一度ご認識していただきたいのは、ご自身の考え方です。

電気をどのように使うのか?、あるいはできるだけ使わないのか。

賢い電力プランを選択する際に考えておきたい最低限のポイントを以下に列挙しました。

電気プラン選定のポイント

  • 生活地域・・・都会か田舎か、寒冷地か温暖地か
  • 生活環境・・・戸建てか集合住宅か
  • 家族構成・・・将来を含めた家族構成
  • ライフスタイル・・・昼はほとんど誰もいない家庭、常に老人がいる家庭。など
  • 生活志向・・・必要なものは使う派、徹底的に節電する派。など
でんきる

価格のみを優先する?それとも・・・?

新電力への申込み方法

旧電力会社には手続き不要です。切替先の新しい電力会社が一括して手続きを行うからです。

電力会社への切り替え時には、電力メーターの「スマートメーター」への交換が必要ですが、この工事は基本的には無料となっており、こちらの手続きも不要です。(例外はあります。)

申込みに必要な「お客様番号」「メーター番号」などを準備しておけば特に面倒なことはありません。

申込み時の注意点

  • 事務手数料・・・2,000~3,000円程度の事務手数料を設定している会社もあるようです。事前確認しておきましょう。
でんきる

付帯条件には気をつけよう!

電力自由化、今後の展望

電力自由化今後の展望

誰もが電力の自由化が実現すれば、新規参入が促進され、結果、電力料金が「安くなる」と認識されています。

しかし、実は政府も経済産業省も、電力自由化によって電気料金が安くなるとは説明していません。

電力自由化が「電力料金を最大限抑制する」ものと説明しているに過ぎません。

電力料金が上がっていくということを前提にした上で、その上昇をいかに抑制するかが主眼ということです。

現状(2023年5月時点)では、この目的の達成はなかなか難しいようです。

当面の心配ごととしては、かつてなかったような「電気料金の負担額」になる可能性があります。

でんきる

今後はどうなっていくのでしょうか?

短期的展望

目下、興味を持たれるべきは大手電力会社の料金値上げです。

「値上げ申請」の意味をよく理解しましょう。

>>>電気代値上げ新記事作成予定(2023年5月下旬)

まずはご自身の契約の確認を

ご自身の契約が「規制料金」「自由化料金」なのかご確認ください。

電力自由化とともに電気料金の設定も市場原理に従う予定でしたが、需要家の保護のために、大手電力のプランの中に「規制料金プラン」も設定することが義務付けされています。

これまで「規制料金」は「自由化料金」よりも安いというのが常識でしたが、「規制料金」は燃料費調整単価の上限が設けられており、この状況下では逆転しているケースも発生しています。

最低限、自分の契約内容は確認しておいてください。

でんきる

自分の契約内容は把握しておこう!

注視すべき電力会社

関西電力と九州電力に注目です。

ともに原子力発電所の再稼働が順調で、2023年度の黒字転換が噂されています。

この2社との契約が可能な地域の方々は、これから企画されるプランに注目してください。

この2社と相対取引する、例えば関係会社が運営する新電力も同様です。

また、この2社については値上げ申請をおこなっておりません。

理由は、順調に進捗する原子力の再稼働としか考えられません。

関西電力では40年超の美浜3号機の運転再開まで認可されています。

当然、他電力会社プランとの差異が出ます。

電気料金値上げを申請している7電力には政府からの圧縮要請まで出ており、相当な不公平感が出ます。

電力会社どうしの不公平感ではなく、この2社と契約できる需要家とそうでない需要家の不公平感です。

「売り手・買い手ともに不特定多数、商品同質化」という経済原則を大きく逸脱することが危惧されます。

経済産業省はどう措置するのか。電力広域運営推進機関(OCCTO)がどういう調整に当たるのか否か注目です。

でんきる

関西電力、九州電力の動向から目が離せないね!

長期的展望

以下に長期的に注目したい点を列挙します。

原子力再稼働と革新炉の開発

政府は明確に原子力再稼働・革新炉の開発の路線に舵を切りました。

おそらく、今後のエネルギー危機や脱炭素圧力を考えたら、反対勢力の存在や福島の被災者の心情を考慮しても「これしかない」という結論に至ったものと考えられます。

この方針が具体的に進展するならば、他の大手電力の収支も一挙に改善されるものと考えられます。

同時に、安価な原子力の電力が大量に流通するわけですから、当然、電力卸売市場(JEPX)も活性化が期待されます。

エネルギー安全保障

天然ガス輸出額世界1位、石油・石炭輸出額ともに世界3位。これがロシアです。

世界のエネルギー安全保障のど真ん中に位置するのがロシアです。

今後の情勢やエネルギー戦略に敏感に反応できる産業構造が必要になります。

脱炭素の動き

天然ガスといえども、石炭の50%、石油の70%のCO2の排出量です。

なぜ、温暖化対策上、許容されているのでしょうか?

自社火力発電プラントを持つとか、天然ガスの長期取引契約があるとされる企業にもこれから「脱炭素圧力」が加わります。

先進的技術開発

大規模蓄電システムや小型原子炉開発などの関連技術開発。

水素エネルギーなどの新しいクリーン燃料の開発。

これらに注目が集まります。

新しいビジネスモデル

特に分散型モデルの創出に注目です。

その他「容量(kW)市場」、「需給調整(ΔkW)市場」など有望とされる事業モデルがありますが、ここでは割愛します。

新しいエネルギービジネスモデルには、必ず安価であるか、価格に変わるようなメリットが付帯します。

電力自由化のまとめ

電力自由化のまとめ

日本では2016年から電力小売の自由化が始まりました。

この制度によって、家庭や企業などの電力需要家は、自分たちが契約する電力会社を自由に選べるようになりました。

様々なメリットやデメリットがある中で、昨今、安定供給や値上げの問題などのネガティブな指摘が目立ちます。

特に値上げ問題は根深く、異常気象・ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機など、根本的な解決の糸口が見つかりません。

その結果、多くの新電力が倒産・事業撤退を求められました。

では、電力自由化は「失敗」だったのでしょうか?

「失敗」と結論づけるのは違和感が残ります。

電力自由化そのものは失敗ではなく、

  • 異常気象
  • エネルギー危機
  • 脱炭素圧力

など、今起きている問題を織り込んだ上で、どのように制度設計を再構築していくかが重要です。

しばらくは事業者にも需要家にも厳しい状況が続くことが予想されますが、眼の前の現実を前提条件として捉え、自由化初期のような「電気料金の低位安定」を実現して欲しいものです。

そして、電力自由化で得られるメリットに焦点をあて、電力卸売市場(JPEX)の活性化、新ビジネスモデルや先進的技術開発へと繋がっていくことを期待します。

でんきる

長期的な視野で捉えていくことが大切だね!